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「林 英哲 with オーケストラ」の魅力 − TaikOz
イアン・クリワースさんからのメッセージ
私は最近、日本の国立劇場で演奏するという、長年の夢をかなえました。私が初めて日本に住んだのは1981年のことでしたが、そのとき国立劇場で歌舞伎を見て本当に心を奪われるほど感動しました。歌舞伎の色彩、音、雰囲気すべてに魅了されました。国立劇場では、毎年すばらしい「日本の太鼓」の演奏会が開かれていることを後で知り、優れた役者や奏者と同じ舞台を踏むことができたらどんなにすばらしいだろうといつしか考えるようになったのです。
今年の9月1日と2日の「大地千響」で、英哲さん、風雲の会、岩手県の神楽奏者と私たちTaikOzの共演を英哲さんが企画してくださって、この夢が現実のものとなり、英哲さんには本当に感謝しています。日本の皆さまの前でオーストラリアの太鼓を披露できるのはこのうえなく名誉なことであり、今まで味わったことがないような感動と興奮を覚えました。
この演奏会でもっとも印象深く、そして美しかったのは、オープニングの場面でした。大きな桶胴太鼓が、静かに波打つ水の上に、まるで満月のように浮かび上がっています。舞台裏から聞こえる太鼓の響きに合わせ、英哲さんがメ海の向こうモから呼ぶように太鼓を鳴り響かせます。その力強い和太鼓の響きのあとに、遠いかなたから幻のような人の姿が現れました。それはオーストラリアの砂漠の色に身を染めたマシュー・ドイルが、心にしみわたるディジェリドゥの低い響きで、英哲さんの呼びかけに答える姿でした。
私が最も満たされた気分になったのは中間部で、心の奥深くから染み出るような日本の謡を英哲さんが歌い始めたときでした。最初英哲さんは一人で歌っていたのですが、やがて英哲さんの呼びかけに答えるように、遠い世界のかなたから、同じような力強さ、そしてオーストラリアの心の内を歌う歌が聞こえてきたのです。魔法にかかったような不思議なひとときでした!
この演奏会では、英哲さんの視覚、聴覚に訴える並外れた音の力に圧倒されました。英哲さんの太鼓の音がとても力強く、人の心を打つものであることは周知の事実ですが、どうしてそのような音が出せるのかご存知ですか?それは、ほかの太鼓奏者のだれよりも、英哲さんは音楽における構成や音色の重要性を理解していらっしゃるからです。彼はまさにこの道にすぐれた大家です。
私は現在プロのメ和太鼓奏者モですが、その前の20年間は、シドニー・シンフォニーの主席打楽器奏者を務めていました。長年、有名な作曲家の手による多くのすぐれた作品を演奏し、その経験を通して、すぐれた音楽を創り出すのには、構成や音色、心の動きがいかに重要であるかを知りました。
多くの異なる楽器で編成されるシンフォニー・オーケストラは、聴衆の方々が聴いて楽しめるように、作曲家の思いを理解し、それに命を吹き込むことが得意です。でもそれを数個の太鼓だけでおこなうとなると至難の技です。今度英哲さんの演奏をお聴きになるときは、彼がどのようにしてシンフォニーのように音の全体世界を創り出すのか耳を傾けてください。
12月に英哲さんはソリストとしてオーケストラと共演する予定なので、これにはとてもいいチャンスです。この「林英哲withオーケストラ」で英哲さんは4つの協奏曲を演奏しますが、石井眞木氏(「モノプリズム」)、松下功氏(「飛天遊」)のすぐれた作曲家が和太鼓の音の響きからエネルギーを引き出し、太鼓とオーケストラの楽器の絶妙なコンビネーションにより新しい音色を創り出すのを目の当たりにするでしょう。このような深い音色と、興味深い音楽の形、そして最もびっくりするのは、100人の奏者全員が同じものを求めて演じる点で、それはとても感動的で、満ち足りた気分になります。ただただ驚くばかりです!
私が在籍していたシドニー・シンフォニーで、2002年、英哲さんが「飛天遊」を演奏されたときも、私は同じ経験をしました。英哲さんの太鼓の隣にオーケストラの打楽器を置き、私たちはリズムと音色で、巨大なメ彫刻モを創作しました。英哲さんの太鼓が生むパワーが、オーケストラ全体にエネルギーと興奮を吹き込みました。そして太鼓が私の命となったのもこの演奏会だったのです。
英哲さんの25周年記念演奏会の特別プログラムのひとつは、石井眞木氏の「モノプリズム」です。これは音楽における革命的作品です。7つの締太鼓が奏でる最弱音のメ雨だれモの音や、3つの秩父太鼓による楽しい祭りの音、英哲さんの大太鼓の雷鳴のような轟きなど、和太鼓の響きがオーケストラと重なり、非常にユニークで力強い音楽を創り出しています。このような音楽は今までありませんでしたが、石井氏はこれを実現し、日本人が誇るべき作品に仕上がっています。
実際、この作品は私にとってとても身近なものです。なぜなら、石井氏が私の可能性、すなわち、オーストラリアの一和太鼓奏者としての可能性に気づかせてくれたからです。石井氏は、例えて言うなら、メコインの裏側モなのです。彼は、日本の伝統音楽を知っている日本の音楽家であると同時に、ヨーロッパの伝統に基づいた音楽も創りました。これに対し私は、ヨーロッパの伝統の中で育ったにもかかわらず、日本の伝統音楽を愛し、演奏しています。
というわけで、2001年のことですが、TaikOzがオーストラリアで、「モノプリズム」を初演する機会に恵まれたときの私たちの喜びようは、想像がつくでしょう。このときもうひとつの夢がかなったのです!これまでにTaikOzは「モノプリズム」を11回演奏しました。中でも最高の出来ばえだったのは、偉大なる指揮者、岩城宏之氏の下で演奏したときのものでした。悲しいことに、彼は去年この世を去ってしまいましたがノ。彼はこの作品に対し造詣が非常に深く、演奏についても深く理解されていました。
オーストラリアでは、「モノプリズム」の人気が高いことをご存知でしたか?シドニー、メルボルン、パース、ブリスベンの聴衆は、驚くほど革新的なこの作品の美しい音色を体感し、楽しみました。
思考力、目、耳、そして心を働かせれば、秋の日本庭園のすべての音と色を見聞きできるでしょう!
TaikOzを代表し、心から英哲さんの記念すべき25周年がすばらしい年であることをお祈りします。おめでとうございます。これからのますますのご活躍を期待しています。
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